オリーブには、古来より様々な逸話やいわれがあります。その一部を紹介します。
オリーブオイルの歴史は古く、ヨーロッパでは紀元前約5000年頃には使われていたとされています。中でもローマ帝国では、飲む・食べる・調理するといった「食」はもとより、儀式に、体をマッサージするオイルに、果肉と共に傷の手当てにと、生活の様々な場面に欠かせない、まさに万能オイルだったようです。
絶世の美女、クレオパトラも美容オイルとしてオリーブオイルを愛用していたという逸話も有名です。
旧約聖書の「ノアの箱舟」にもオリーブは登場します。大洪水のあと、陸地を探すためにノアの放ったハトがオリーブの枝をくわえて帰ってきます。これを見たノアは陸地が近くにあることを知った…との一説に基づき、オリーブの枝は、ハトと共に平和の象徴とされるようになりました。
また、古代オリンピックでは、勝者に授与される冠はオリーブの葉で作られていました。これは、オリーブの葉冠をかぶったアスリートが各都市へと帰って行く様が、祭典の終了後も平和な状態が続くことを象徴的に示していました。そこには今日の金メダル以上に重い意味が込められていたようです。
植物は子孫を残すために種子を作り、それができるだけ遠くに行って芽を出し、成長してもらうことが種の繁栄につながります。とはいえ、植物は自分で動くことはできませんので、その役目を動物や鳥たちに託します。種子を遠くまで運んでもらうお返しとして、種子のまわりにおいしいフルーツをつけて「どうぞ食べに来てください」また「食べてくれてありがとうございます」と言うメッセージを発信しています。このメッセージにもひと工夫あり、種子がまだ若くて熟していない間は、フルーツも固くておいしくなく、「まだ食べる準備が整っていません」と言う意志表示をしています。種子に発芽に必要な栄養が充分蓄積され、準備が整うとフルーツは熟して柔らかくなり、食べ頃を知らせるのです。
一方、種子はその植物の命を伝える最も大切な源です。小さな中にその植物が健全に育つための生命の元となる油分や栄養分がバランス良くぎっしりと詰まっています。そんな種子そのものが食べられてしまうと、その植物は子孫を残すことができなくなります。そのため、あえてその中に自分以外にとってはベストではないもの、あるいは害があるような物質を含んで「種子を食べてもおいしくない」「食べると体によくない」という情報を発信し、鳥や動物が食べてしまうことを防いでいます。それをよく知っている動物と鳥たちは、時期が来ると待ってましたとばかりにおいしく熟したフルーツをご馳走になり、その種子を遠くへ運びます。そこには、ただ単に地上に落ちた種子よりも動物や鳥の体内を通って落とされる種子の方が発芽率が数倍も良いという、驚くべき共生関係が成り立っています。まるで動物からの「おいしいフルーツをありがとうございます」と言うお返しのようです。
オリーブもその流れの中でその生命を繋いできました。オリーブオイルは、いわば動物たちとの「ありがとうオイル」と言えるのではないでしょうか。
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